暴走する資本主義
 
6月26日、翻訳本「暴走する資本主義」(ロバート・B・ライシュ著)が出版(東洋経済新報社)されました。
 
「・・・根本的な問題は露骨な賄賂やリベートそのものではない。むしろ、民主主義のあらゆる側面に超資本主義が侵入していることが問題なのだ。全体的な政治決定プロセスが、企業ロビイスト、弁護士、広報の専門家に支配されており、企業マネーが日常的に民主主義を飲み込んでしまって、市民の声を届けることがほとんど不可能になっているのだ。したがって、選挙活動への献金を厳格に制限するだけでなく、法の制定に影響を与えるためのロビーや広報に対する企業の支出も制限すべきである。」(ロバート・B・ライシュ著「暴走する資本主義-第6章:超資本主義への処方箋P290-291)
2008年6月5日AP通信―米大統領選民主党候補バラク・オバマと米民主党全国委員会(DNC)は米連邦政府と取引のある企業の企業ロビイストや政治活動委員会(PAC)からの献金を今後は受け付けない方針に「チェンジ」した、と発表。
 
 
 
 
 
このたび「あなたのTシャツはどこから来たのか」に続き、弊社コーポレートシチズンシップの翻訳事業第2作目となる、ロバート・B・ライシュ著「暴走する資本主義(原題”Supercapitalism”)」が東洋経済新報社より刊行されましたので、ここにお届け申し上げます。
 
冒頭に挙げましたのは本書からの引用ですが、AP通信によるオバマの献金についての記事が本書でのライシュの主張を如実に物語っています。バラク・オバマ候補はインターネットなどを通じた個人献金を中心にこれまでに270億円の選挙資金を集め、民主党指名争いのライバルだったクリントン氏はおろか共和党のマケイン氏の献金額を大きく上回り、記録的な献金額を積み上げています。オバマ氏は自らの政策や方針がワシントンの専門家からの影響をできるだけ受けないよう、企業献金を禁止したいとかねてから意思表示していました。
 
元米国労働長官でこの4月にオバマ氏支持を表明した著者ロバート・B・ライシュ氏は、早くからオバマ氏に政策面で助言を与え、政治家として実績の勝るクリントン氏やエドワーズ氏、そして本選での相手となるマケイン氏と互角に戦うための原動力となってきました。先の言葉を引くまでもなく、本書は今後の米国を占う上で最も重要な書籍の一つになると思われます。「チェンジ」を標榜するオバマ氏が実践するであろう将来の処方箋がふんだんに盛り込まれた書籍になっており、好むと好まざるとにかかわらず米国の影響を大きく受ける日本の、各界リーダーの方々にとっても参考となる一冊であると思います。
 
第1章から5章までは超資本主義の発展過程を歴史、価値観の変遷、最近のCSR活動などを軸に数々の実例を挙げながら言及し、最終章である「第6章:超資本主義への処方箋」では、先の引用も含め、筆者の極めて独創的な提案が述べられています。
 
<ご参考:各章のトピック>
第1章-第2次大戦後のアメリカの黄金時代を振り返る。米国の民主的資本主義は「経済と政治の融合」と総括することができるが、マイノリティーや女性の参加が制限されており「見せかけの」黄金時代であった。
第2章-資本主義の一人勝ちの様相が1970年代後半から強まっていく様子を、大手寡占企業、大労働組合、企業ステーツマンの衰退を例に説明。
第3章-我々の中にある二面性に言及。投資家・消費者としての我々が、市民としての我々よりも優位に立ってしまっている現状を丁寧に描き出す。
第4章-民主主義をリードすべき政治が、超資本主義に走る経済に飲み込まれている実態を、具体例な企業活動を挙げながら検証する
第5章-昨今の企業による社会貢献活動(CSR)が、経営者や政治家によって好きなように解釈・利用され、そのことによって民主主義と資本主義との境界がさらに曖昧なものとなっているとして、その実例を挙げながら検証していく。
第6章-以上のことから筆者が試みる、超資本主義を克服するための処方箋。どうやったら政治と経済の境界をより明確にすることができるか、大胆な提案の数々が繰り広げられている。
 
 
<訳者略歴>
雨宮 寛  コーポレートシチズンシップ代表取締役
コロンビア大学ビジネススクール経営学修士およびハーバード大学ケネディ行政大学院行政学修士。クレディ・スイスおよびモルガン・スタンレーにおいて資産運用商品の商品開発を担当。2006年コーポレートシチズンシップを創業。明治大学公共政策大学院兼任講師(CSR・社会起業論)。CFA協会認定証券アナリスト。共訳書にピエトラ・リボリ著『あなたのTシャツはどこから来たのか?』東洋経済新報社(2007年)、ロバート・B・ライシュ『暴走する資本主義』東洋経済新報社(2008年)、サラ・ボンジョルニ『チャイナフリー:中国製品なしの1年間』東洋経済新報社(2008年)。
今井 章子  コーポレートシチズンシップ取締役
ハーバード大学ケネディ行政大学院行政学修士。英文出版社にて外交評論誌の編集を担当。2005年ジョンズホプキンス大学ライシャワー東アジア研究所客員研究員。2006年1月東京大学法学政治学研究科客員研究員等を経て、現在、東京財団広報担当ディレクター。共訳書にピエトラ・リボリ著『あなたのTシャツはどこから来たのか?』東洋経済新報社(2007年)、ロバート・B・ライシュ『暴走する資本主義』東洋経済新報社(2008年)、サラ・ボンジョルニ『チャイナフリー:中国製品なしの1年間』東洋経済新報社(2008年)。
 
 
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